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コロナ禍の「はたらく」に関する意識調査レポート②

「働き方」「価値観」「キャリアチェンジ」、業界や職種毎の特徴

前回実施したアンケート結果から、業界や職種などのセグメント毎に「働き方」「価値観」「キャリアチェンジ」の状況について分析したところ、以下のような特徴が見られた。

・コロナ以前からリモートワークに慣れている業界は、働くことに対する価値観が変化した割合が低い

・営業や企画系の職種は、働くことに対する価値観の変化した割合が、他の職種よりも高い

・小売業界において、コロナの影響を機に新たにキャリアチェンジを考えるようになった割合が高い

 

<業界や職種毎の考察>

コロナの影響を受ける前からリモートワークを実施している業界に関しては、働き方の変化が少なく価値観への影響も少なかった。一方で、コロナの影響を受けてリモートワークの導入が急速に進んだ業界に関しては、働き方の変化が大きく個人の価値観に与える影響も大きい結果となった。職種で見ると、営業職や企画職において働くことに関する価値観への影響が大きく、営業職についてはオンラインベースの営業手法への変化や、そもそも営業マン自体が必要なくなるのではないかといった、存在意義そのものについての危機感を持った回答が目立った。一方で、企画職においては、既存のビジネスモデルに与えるネガティブな影響を懸念する意見もあったが、コロナを変化する機会と捉え、ビジネスチャンスに繋げていこうとするポジティブな意見が目立った。

コロナ以前はキャリアチェンジを考えていなかったが、コロナの影響を受けて新たにキャリアチェンジを考えている人の割合は、調査の時点では小売業界において高くなっていた。これは、外出自粛や訪日客の減少など、コロナの影響を早期に受けたことが関連していると考えられる。

 

「業種自体が減少する可能性が高いと感じている」「1つの業界、1つの仕事はリスクだと思った」などの意見からも窺えるように、コロナの影響により、急速にデジタル化が進み働き方が大きく変化したことで、業界や職種そのもののあり方が問われ、形を変える、あるいはなくなることも考えられる。これらのように不確実性が高まっているからこそ「コロナウイルスが収束した後の自分のあるべき姿、どうしたいかを考えるようになった」「自分がやりたいことに時間を割きたい」など、自身の価値観を見つめ直す機会となっている。今後さらに、キャリアチェンジを考える人の割合が高まるのではないかと考えている。

■コロナ以前からリモートワークに慣れている業界は、価値観の変化が少ない

ほとんどの業界で70〜80%以上の人たちが価値観が変化したと回答している中、コンサルティング業界とソフトウェア業界は、他の業界に比べると変化したと回答した人の割合が少なくなっている。コンサルティング業界においては、「変化はない」と回答していた割合が、「変化した」割合よりも多くなっている。個別の理由を見てみると、

「元々、裁量権の自由度は大きいため、在宅ワークとなっただけでは価値観の大きな変化はない」

「今までも同じような働き方だったため」

など、以前からリモートワークを実施していたり、働き方の裁量権が大きいことが影響していると考えられる。

一方で、コロナによる影響を受けてリモートワークを取り入れる企業が増えた業界に関しては、価値観が「変化した」と回答した割合が高かった。医療・ヘルスケア業界や、小売業界、サービス業界の回答の中には、変化に対して以下のような戸惑いや不安、強い危機感を持っているという回答が目立った。

「製薬では今、営業モデルの見直しを迫られている」

「小売・サービスのような対面を基本とする業界であっても、デジタル化を進めないといけないと危機感を持った」

 

■営業や企画系の職種は、働くことに関する価値観が変化した割合が高い

営業職については、物理的に顧客と会うことが難しく、オンラインをベースとした営業手法に変化せざるを得ない不安や、危機感を感じている意見が目立った。

「クライアント側でもリモートが推進」

「旧態依然の営業スタイルであり、システムを導入したとは言え、それを上手く使い切れてない」

「我々ができることはあるのか、心底不安に思った。」

「取引先を訪問する営業マンはそんなに必要ではなくなる(優秀な人材だけ残す)」

営業職の次に変化の割合が高かった企画職においては、今回のコロナの影響でビジネスの前提が変化し、それに適応しようとしている様子を感じ取れる意見が目立った。

「既存のビジネスモデルのまましがみついていたら危機。」

「いかに変われるか、今に固執しないことで新しい機会をうめそうです。」

「研修やMBAを提供している会社であるが、リアルである必要性はないと断言できるくらいだと感じている。リアルが前提ではなく、オンラインが前提の世界で事業を再構築する必要性があるだろう」

一方で、コンサルタントにおいては前項で記載した同様の理由で変化した割合は低くなっていると考えられる。

 

■小売業界において、新たにキャリアチェンジを考えるようになった割合が高い

コロナの影響を受ける前はキャリアチェンジを考えていなかったが、コロナの影響を受けて改めてキャリアチェンジを検討するようになった人の割合は、活動自粛など仕事への影響が早く大きかった小売業界の人たちが高くなっている。今後、他の業界においてもコロナの影響を受けて、キャリアチェンジについて検討される人の割合は高くなるのではないか。「1つの業界、1つの仕事はリスクだと思った。キャリアのポートフォリオ形成を考えるようになった。」というこれからのキャリアを考える上での象徴的な意見もあった。

キャリアチェンジを考えるようになっていない人たちの回答内容は、

「社会に必要な仕事をしていると思っているから(コンサルタント/インフラ業界勤務)」

「今の仕事をずっと続けていきたいため。(コンサルタント/コンサルティング業界)

など、今の仕事にやりがいを感じている前向きな回答が多く、コロナの影響を受ける前に既に転職や起業などのキャリアチェンジを実施済みという回答も複数あった。